地域活性化政策立案のための音響信号による“賑い度”調査プラットフォームの研究開発

概要

岡山大学大学院自然科学研究科ヒューマンセントリック情報処理研究室(阿部 匡伸教授、原 直助教)と当社が共同で提案した、「地域活性化政策立案のための音響信号による“賑い度”調査プラットフォームの研究開発」が総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業「地域ICT振興型研究開発」(通称SCOPE)に採択され、3年間の活動予定で共同研究開発を進めております。

研究目的

政策立案には実態把握が欠かせません。本研究ではICTを活用して、安価で効率的に、かつ、従来法より密度の濃い実態把握を実現します。具体的には、時間的、空間的に密度濃く街の賑いを把握できるプラットフォームを研究開発し、必要な時に必要な分解能で街の賑いマップを提供し、これにより、地域活性化の政策立案に寄与します。

研究における当社の位置付け

当社がお客様にサービスとして提供しており、強みとして持つ実績の1つに移動体管理があります。その中のバスロケーションサービスでは、対象車両がいつどのバス停留所を通過したかという情報をサーバに格納することで運行情報を管理しています。
本サービスは通信網を利用した岡山バス路線でのバスロケーション実証実験から始まり、水平展開可能な大規模型のバスロケーションシステム開発を経て、クラウド型バスロケーションサービスの研究開発へと展開しています。このクラウド型バスロケーションサービスは、路線バスや高速バスについて、バス事業者に動態管理を提供し、一般利用者には運行情報を提供します。バスロケーションサービスは2011年から複数のバス事業者で利用されています。
現在、各社からのフィードバックを受けて新機能の追加や既存機能の向上を検討すると共に、安価にシステムを構築するために車載装置に代わり、スマートフォンを利用する実証実験を完了しております。
本研究開発ではこのシステムをベースとして研究を推進します。バス車両の代わりに人間を扱うため、対象数が増加することになりますが、クラウド型の特徴を生かして対処が可能です。

研究開発概要

スマートフォンで録音した音響信号から賑い度を推定します。「賑い度」とは、人の混雑度合です。ゲームをしたり、メールを読んだりなど、スマートフォンを手に持って操作している最中にマイクロフォンで音響信号を録音し、騒音レベル計算と音声、非音声の識別を行って賑い度を推定します。
賑い度推定機能をスマートフォンアプリとして開発し、不特定多数のユーザにアプリをダウンロードさせ、市民参加型のクラウドソーシングのアプローチで賑い度を収集します。サーバに送るデータは、音響信号から推定した賑い度だけであり、会話などが録音されたとしてもプライバシーを侵害することはありません。
参加者のインセンティブとして、参加者への音環境地図フィードバックを提供します。参加者の自宅近辺や日々の移動経路での賑い度を地図上に表示し、他の場所の賑い度と比較することで、自分の住環境のチェックや、一日をどの程度賑いのある場所で過ごしたかを知ることができます。
データ収集側には、参加者の募集方法として、「会員型」と「イベント型」を提供します。「会員型」は長期間にわたりデータを収集するもので、「イベント型」は短期的な祭りや展示会などで賑いのスポットや時間帯を計測します。
利用方法としては、「蓄積型」と「リアルタイム型」を提供します。「蓄積型」は長期間に渡って不特定多数から収集した賑い度を提供し政策立案のための基本データとして活用します。「リアルタイム型」は不特定多数から収集したリアルタイムの賑い度を提供し、イベントなどの混雑度のモニタリングや人の誘導などに活用します。


図 音響信号による「賑わい度」調査プラットフォームの概要

研究開発実績、成果

平成27年度の活動として、当社は「市民配布のためのスマートフォンアプリケーションの開発」、「賑い度の可視化機能を備えたサーバ開発検証」という大きく2点の目標に対する研究開発を主として活動を進めました。
「市民配布のためのスマートフォンアプリケーションの開発」としては、配布に適したアプリケーションを提供するため、データ通信量を最適化し、当社の提供するバスロケーションシステムのサーバ機能を応用して大規模な人数にも耐えうるサーバ構築を実施しました。
「賑い度の可視化機能を備えたサーバ開発検証」としては、今後のユーザ増を見通した最適なサーバ動作環境を検証、構築するとともに、プライバシーにも配慮したユーザ管理、通信が可能な仕組みも検討、実証しました。結果、最適な環境として組み込みを実施しております。
平成28年度は前年度から引き続き「会員型」、「イベント型」に適したユーザ管理方法を主に研究開発を進めるとともに、市町村地域や、イベントにてフィールド実験のご協力を頂き、検証を実施しました。
7月26日(火)、7月27日(水)に両備スマートフェア’2016に本研究活動を応用した関連システムの展示を実施しました。各ゾーンに設置した端末から音響信号を収集することで、会場の賑い遷移を可視化して表示しました。


図 スマートフェア会場の「賑い度」

会場の展示エリア毎に音響情報収集用のタブレット端末を設置し、3分毎に音響情報を解析して「賑い度」として表示しています。


図 ブース別の「賑い度」詳細情報

「騒音」度合いとしてデシベル[dBA]を集計するとともに独自のアルゴリズムで「人の声」度合いをスコア表示しています。
左側は過去3分間の情報を1秒毎に解析し、右側は1日分の遷移情報を表示しています。

10月15日(土)は「倉敷秋大祭」においてイベント型開発のフィールド実験を実施しました。音響情報を収集するアプリを用いて、屋外の賑い度情報を表示しました。


図 オトログマッパー(倉敷秋大祭)の端末画面

本イベントで使用した音響信号を収集するAndroidアプリ「オトログマッパー」の画面です。リアルタイムで音響情報の解析を行い、騒音マップの基データを生成してサーバに送信します。


図 倉敷秋大祭フィールド実験の騒音マップ

端末から音響情報をサーバに収集し、蓄積することで騒音マップとして表示します。地図の中で色が濃い場所ほど、賑わっている場所と判断することができます。うちわのマークは「秋祭り」のtweetが多く上がった場所を示します。

騒音マップの基データと合わせて周囲の騒音度や混雑度、環境情報をtweetして頂くことで“賑い度”調査プラットフォームとしての情報が蓄積されることとなります。

次年度もこのようなフィールド実験を行う予定です。

フィールド実験に仕様したアプリケーションはGooglePlay外部リンクに公開しています。
URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.scope.cs.a.soundmap&hl=ja

関連リンク

岡山大学 2015年10月23日プレスリリース
URL:http://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press27/press-151023-5.pdf

参考文献

Sunao Hara, Masanobu Abe, Noboru Sonehara, “Sound collection and visualization system enabled participatory and opportunistic sensing approaches,” in Proceedings of 2nd International Workshop on Crowd Assisted Sensing, Pervasive Systems and Communications (CASPer-2015), Workshop of PerCom 2015, pp.390–395, St. Louis, Missoouri, USA, March 2015.
原直,阿部匡伸,曽根原登,“クラウドソーシングによる環境音収集システムを用いた予備収録実験,” 2015年日本音響学会秋季研究発表会, pp.147–148, 3-Q-3, Sept. 2015.
岡山大学大学院自然科学研究科 ヒューマンセントリック情報処理研究室
教授:阿部匡伸  助教:原直